首無の如き祟るもの (ミステリー・リーグ)
「奥多摩に代々続く秘守家の「婚舎の集い」。二十三歳になった当主の長男・長寿郎が、三人の花嫁候補のなかからひとりを選ぶ儀式である。その儀式の最中、候補のひとりが首無し死体で発見された。犯人は現場から消えた長寿郎なのか?しかし逃げた形跡はどこにも見つからない。一族の跡目争いもからんで混乱が続くなか、そこへ第二、第三の犠牲者が、いずれも首無し死体で見つかる。古く伝わる淡首様の祟りなのか、それとも十年前に井戸に打ち棄てられて死んでいた長寿郎の双子の妹の怨念なのか―。」
土着的民間伝承でいろどられた、本格推理小説です。おどろおどろしい描写や、閉塞的なムラ社会、一族の跡取り騒動など、横溝正史ファンにはたまらない世界が描かれています。
とあるブログで大絶賛されていて、自称「横溝好き」でもあることだし、ためしに読んでみました。
この作品は、怪異譚蒐集家で作家でもある刀城言耶(とうじょうげんや)シリーズの3作目らしいです。しかし、どうもシリーズとは別に、刀城言耶をメインとした作品があるっぽい(真相不明 ←
wikipediaで見ると3作目になってる)。
とりあえずシリーズ物は1作目から読むのが礼儀だろうと、先に『
厭魅の如き憑くもの
』と『
凶鳥の如き忌むもの
』を読んでます。
民間信仰や怪奇現象を否定も肯定もしないで、事件の真相を現代的におっていくのが、このシリーズの(というか、主人公の)姿勢です。理論的・科学的に解明できない現象は、怪異現象としてそのまま受け入れるところが、横溝作品との違いかな〜?と思いました。本格推理小説でありながら、ホラー要素を多分にふくんでいるので、怖がりの方は読みづらいかも。
その中でもこの『
首無の如き祟るもの
』は、最初から最後まで、なんだかわからないモノの気配をずーっと感じさせるつくりになっています。
10年前の十三夜詣りでの双子(妹)の死、婚舎の集いでおこった長寿郎と鞠子の首無し殺人事件、その後におこった首無し殺人と戻ってきた首の謎。
この3つの事件(うち後者2つは連続殺人事件)の謎を解明するべく、当時の駐在の妻だった探偵作家が、その記録や当時の記憶を思い出しながら描くというスタイルをとっています。
事件のトリックはとても込み入ったものですが、探偵役の刀城言耶が
たったひとつの事象に注目すると、すべての謎が解明されるという通り、たったひとつの事象に気づいたとたん、複雑にからみあった謎がバラバラとほぐれていく様が見事です。
その謎は、シリーズを通して読んだ人、ミステリ小説に慣れ親しんだ人ならなんとなく「こうじゃないかな」と思い描くことです。しかし、それに気づいても、刀城言耶の言う「ある人が当然するべき時に、それをしなかった」という部分に気づかなければ、真相に導かれないようになっています。
このあたり、作者(三津田氏)の手腕に脱帽ものです。
ほかにも、読者が「こうじゃないか?」と思ったことを、その直後に「そうではない」と作中で否定される部分が多々あります。作者が読者の一歩上をいくように作られているので、どうにもこうにも推理しづらい(苦笑)。
しかも、刀城言耶の結論が二転三転していくので、ついていくのがやっとです。○○が犯人だ、いや実は◆◆が・・・、でも実際は☆☆でしょ?・・・ってな感じ。作者に思いっきり振り回されております。
そーゆーわけで、なかなかにおもしろかったけど、正直疲れた

。
個人的には、2作目の『
凶鳥の如き忌むもの
』の方が好きでした。こっちの方がシンプルで、トリックや動機(?)も「あっ!」と叫ぶくらい思いがけないものだったので。
結末も余韻があって、こっちの方が読後感いいしなぁ。